アルゼンチンの葡萄の起源は、19世紀前半にフランスを中心に
ヨーロッパから大量に輸入された苗木が移植されたものです。
それ以前から、修道院や教会など、宗教的儀式に必要なワインを
自給する為に、宣教師たちが製法を伝え、細々と生産されていました。
南米が、欧州からの移民を大勢受け入れるようになり、ワインの生産も
商業ベースで拡大し、人口拡大と共に、消費量も多くなって行くのでした。
ところが、丁度19世紀の後半、研究熱心なフランスの醸造家が、
新大陸、アメリカ原産の葡萄の苗木を輸入しました。 そのことが
原因で途方もない事態が発生するのです。
葡萄の根につく害虫(フィロキセラ Phylloxera)まで、その苗木と共に輸入されてしまい、
害虫に全く耐性を持たない欧州の葡萄は、瞬く間にヨーロッパ全域で壊滅的な被害を受け、
殆どの葡萄の木が枯れてしまったのです。
欧州のワイナリーは、フィロキセラに耐性を持つアメリカ原産の台木にヨーロッパの
葡萄を接木する対策を取り、なんとか災害を乗り切りましたが、
そのおかげで
純粋にヨーロッパ系の葡萄の元木を、自根で栽培できる地域は、
ヨーロッパには殆ど残されていないのです。
欧州で害虫被害が大発生する前の苗木を輸入し、
植樹していたチリ・アルゼンチンには、
結果的にオリジナルのヨーロッパ種が残る唯一の地域となってしまったのです。
現在では、
欧州の一流ワイナリーのモエ・エ・シャンドンや、クリスタルで有名なスワロウスキーも
ワイナリを所有し、生産を続けています。
日本でも、それらのワインは、入手可能ですので、
タンゴとワインの幸せな組み合わせで楽しむのは如何でしょうか?
追加説明
フィロキセラは1860年代にヨーロッパに拡がり、
ヨーロッパのぶどう畑を壊滅状態にした、北アメリカ東部原産のぶどうの寄生虫です。
現在、多くのワイン産地では、
フィロキセラに耐性のある北アメリカ東部、および、中部原産のぶどうを台木として、
ユーラシア系のぶどう品種を接ぎ木しています。
アルゼンチンの独立が丁度1800年代で、タンゴが一番盛り上がった時期が
1929年の世界恐慌の前後から、40年代くらいまで。
第一次、第二次の世界大戦を免れ、疲弊した旧世界(欧州)への
食料供給で一躍成金に踊り出たアルゼンチンは、
地下鉄を世界で2番目に敷設できたほど
バブルに酔いしれる時期を過ごした時期もあります。
ワイン自体は16世紀から、
宣教師によって伝えられていたが、本格的な生産は1800年代になってから。
欧州の移民を活発に受け入れる時期と重なります。
この時期、港で夢破れた移民がウサをはらしたのがタンゴの原型であり、
そこにはきっとワインもあったのではと・・・・
当時の味を伝えるアルゼンチンワイン、そして、スワロフスキーやシャンドンなどの
息のかかった、テイストを楽しみながら踊るタンゴはさながらタイムマシーン。
そんなロマンあふれる話でした。
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