バロン: |
Tangoとはどのような踊りなのでしょうか? |
カルロス氏: |
そもそもTangoは、場末の酒場で踊られる、いかがわしい類の踊りであった。
その背景には、新大陸で孤独・差別・失業など抑圧された環境からの
一種の発露、反抗から始まったと言われている。 そこには、売春にもつながる、男性の欲望のはけ口とも関係した、
いわば女性に対する征服欲を満たす性格も帯びていた。
時代と共に、踊り自体は少しずつ洗練されてゆき、
現在のショウ的な性格を強くして行った。
現在は、自己表現の一つや、自己解放の一つとしての
一面がストレスの多い現代に受け入れられている。 |
バロン: |
そうすると、Tangoのベースラインはマッチョですか? |
カルロス氏: |
それは違うと思う。 Tango発祥時には、
女性に対する征服欲を満たす踊りであったことは確かだが、
Tangoの本質は、自己表現や自己解放の方が強いと思う。 それに、ペアーで踊るこの踊りは、自己中心的な踊りではなく、
相手に対する思いやりも重要で、
お互いが気分良く踊れることが大切だ |
バロン: |
ショウで見る踊りは、激しく・情熱的で、気持ち良い、
思いやりの踊りとは見えませんが? |
カルロス氏: |
確かに、ショウの踊りは見せる・感動を与える側面を強調した
Tangoの一つの極かもしれない。
しかし、Tangoの魅力は自己表現や自己解放であり、
見ることによって解放感や感動を得ることができる踊りは、
見ても踊っても同じ効果を与えるのではないでしょうか? |
バロン: |
おっしゃる通りかもしれませんね。
そういった観点から、良い踊りとはどんな踊りを言うのでしょうか? |
カルロス氏: |
良い踊りとは、
人それぞれ視点が異なり、数値や点数ではかれるものではありません。
ショウダンサー以外で、良い踊りとは、やはり踊って気持ち良いか?
別の言葉で言えば、踊って自己表現や開放感を味わえ、
同時に、踊る相手も満足できるかどうか?ではないでしょうか。
たとえば、ブエノスアイレスに無数にある「ミロンガ」と呼ばれる
タンゴサロンでは、意外と若いハンサムな男性より
50代・60代の年輩の男性が20代の若い女性にもてるんですよ。
踊りの上手い、そして相手に気持ちよく踊らせる男性が
人気である事実は、タンゴの魅力が単に見た目の良い相手と
踊ることで満たされることではないことを示しています。
私も、若くセクシーだけど自分勝手な女性より、
気持ちよく踊れる年輩の相手の方が、
Tangoの相手として最適だと確信しております。 |
バロン: |
説得力のある言葉ですね。ちょっと意地悪な質問ですが、
仮に若くセクシーで踊りが上手く、自分勝手でない相手なら
文句はないですね? |
カルロス氏: |
そうですね。
ただ、実際には年齢を重ねることによって
醸し出される味も重要な踊りの要素であり、
ブエノスの若い子達は経験的に50代・60代の男性が気持ちよく
踊らせてくれる事を知っているようです。
年を重ねるにつれて良い踊りが出来る。素敵な通りだと思いませんか? |
バロン: |
日本ではいい年をして・・・とか、
若い女性と踊ると「エロじじい」みたいに思われるようで
躊躇してしまう方もいらっしゃいますし、逆に、若い相手に
「この若造が、この小娘が」と説教魔・教え魔に変わってしまう方も
いらっしゃって、なかなか上手くいかないようですね。
しかし、Tangoの良さはカルロスさんのおっしゃる通りで、
日本にもそういった良いTango文化が広まり、根付くようになればいいですね。 |
カルロス氏: |
いまTangoLoveで紹介しているような、
イベントが定着すれば決して夢物語ではないと思います。
これからも、楽しい・気持ちいいTangoを広めてください。期待しております |
バロン: |
ありがとうございました |